凛と柔く。

女(35歳)/会社員/既婚/子なし▶日常を綴るブログ

音楽と記憶 -冷静と情熱とevergreen-

「匂いは記憶とリンクする」といわれます。これは科学的な根拠があるらしくちゃんと名称もついていて、「プルースト現象(プルースト効果)」と言うそうです。

しかし私個人としては、匂いよりも音楽の方が記憶とリンクしやすいと感じています。

 

実際に、今でも鮮烈に蘇ることのある「音楽と記憶のリンク」について書いてみようと思います。

 

 

  

音楽と本

冷静と情熱のあいだという本をご存知でしょうか。

ベストセラーとなり映画化もされた有名な本なので、知っている人が多いと思います。

 

この小説は、月刊誌にまず江国香織がストーリーを書き、次の刊行時に辻仁成が続きのストーリーを掲載するという、交互連載の形をとりながら書き上げられていった。
同じ時系列に起こる出来事を、江國はあおいの目線で、辻は阿形順正(あがたじゅんせい)の目線で描いている。

小説は連載が完結すると、江國のパートは赤い装幀で「Rosso(ロッソ)」、辻のパートは青い装幀で「Blu(ブリュ)」というネーミングが冠され、別々の単行本としてセット発売された。この小説は、当時50万部を超えるベストセラーとなった。

 

wikipediaより

 


ハードカバーのそれを手にした2001年当時、私はまだハタチになったばかり。


高校生の頃から江國香織の作品の世界観をこよなく愛し、全ての作品を読んでいました。
それと同時にL'Arc~en~Cielの大ファンでもあったので、ソロ活動を始めたボーカル・HYDEの1stシングルevergreen」を購入したばかりでした。

 

 

江國香織の「Rosso」と辻仁成の「Blu」のうち、「Blu」から読み始めました。

BGMはもちろん「evergreen」。

 

 

冷静と情熱のあいだ

この物語は、若い頃に行き違いで離れてしまった恋人「あおい」と「順正」が、10年後の約束の日を迎えるまでの、それぞれのその後の恋愛や生活を描いています。そして約束の日のことも。

 

心が離れたことによる別れではなかったがために、いつまでもお互いの心にはお互いが息づいていて、何かにつけて過去の恋人のことを思い出す二人。

そんな二人の、亡骸とも言えるような思い出に囚われた、乱暴に言えってしまえば不毛な日々が描かれていた。

 

特にそれを感じたのは、辻仁成の書く順正で、なにかにつけて、「あおい」「あおい」と心の中で呼んでいた。いま隣にいるのは違う女なのに、「あおい」と。

 

対する江國香織の書くあおいは、順正を思い出さないように日々を淡々と穏やかに過ごす。恋人マーヴと共に。それなのに時々不意に現れる順正の影に捕まるのだ。

 

今の私からしたら「いつまで引きずってるの?キモッ!」と一蹴してしまうでしょう。

しかし、いつまでも思い出を抱えてフワフワしている人間を描くことの多かった江國作品に慣れ親しんでいたのと、当時の私は承認欲求も強く、また自己の確立も不十分だったこともあり、なんとなく共感しながら読んでいた気がします。

 

私の中のこの2作品のイメージは「ループ」。

いつまでたってもお互いを心の中に大切に大切に閉じ込めて、同じ場所をぐるぐるぐるぐる回っている。他の場所へ行くことができない。そんな不毛な物語。

(ラストでは少し動きがあるのですが、このイメージを覆されることはなかった。)

 

 

evergreen

L'Arc〜en〜Cielのボーカルhydeが「HYDE」と名義を変え、ソロとしてリリースした1stシングルで、アコギターをメインとしたアンプラグド的な楽曲です。

 

ファーストインプレッションは「命の終わりを唄った曲」。

大切な人に対する想いを抱えながらも、自分の無力さを嘆くような曲。

(調べてみたら、突然亡くなった友人のことを想ってつくられた曲だそうな。納得)

 

作詞・作曲:HYDE

 

窓の中の僕は
グラスの水に
差した花のよう

 

淡い陽射しに揺れて

まどろみの底

気づく夏の気配

 

無情な時計の針を
痛みの分だけ
戻せたなら

 

あぁ、おかしな君との日々を

あふれるくらい
眺めるのに

 

This scenery is evergreen
緑の葉が色づきゆく
木漏れ日の下で
君が泣いている

 

優しい季節を呼ぶ
可憐な君は
無邪気になついて

 

そっと身体に流れる
薬みたいに
溶けて行ったね

 

This scenery is evergreen
儚いほど途切れそうな
その手をつないで
離さないように

 

This scenery is evergreen
可哀想にうつむいている
悲しい瞳を
ぬぐってあげたいのに

 

近づく終わりに
言葉ひとつ言い出せない
This scenery is evergreen
愛しい人よ

 


[PV] HYDE/evergreen

 

HYDEの低く抑えた歌声も相まってものすごく退廃的。それなのに、歌詞からは内側で暴れる苦しい感情が見える。

 

当時*1HYDEの書く詩は抽象的で、絵画のように鑑賞するような気持ちだったけれど、この曲もまさにその特色が色濃くでているのです。

 

 

「evergreen」をBGMに「冷静と情熱のあいだ」を読む

冒頭で書いたように、「冷静と情熱のあいだ」を読んでいる間は、ずっと「evergreen」リピート再生していました。

 

すると。

冷静と情熱のあいだ」の順正の気持ちと、「evergreen」のイメージがシンクロしたのです。

 

片や、離れている元恋人が愛しくて仕方なく、あの時に戻れたならと想像し、離さなければよかったと後悔し、愛しい愛しいと心の中で叫ぶ。

片や、残された時間が少なくて、過ぎてしまった時間が儚くて、愛しい人に何かしてあげたいのに何もできない無力さを嘆く。

 

Bluを読みながらも曲と歌詞が耳に入ってきて、Bluのストーリーと絡み合って私の記憶の中に埋まりました。

 

その後、Rossoを読んでいるときのBGMも「evergreen」。

 

Bluを読んだ後だからこそ感じる順正の気持ち=evergreenが埋まったままで読んでいるので、あおいの物語を読んでいるのに、あおいの傍らで順正が存在して見守っているかのように感じながら読みました。

 

折りしも外は雨。

退廃的で、捕われていて外に出られないループするこの物語と、そして穏やかでどこかに絶望を抱えたかのようなHYDEの声が、ありえないほどの共鳴をしていました。

 

2冊を読み終わるまでおそらく4~5時間。

雨による静けさと雨音、そしてHYDEの声におぼれながら読んだ2冊。

 

もう今では切り離して思い出すことはできないほど、この2冊とevergreenは同じものとして記憶されたのです。

今までの人生で、ここまで音と記憶が強く結びついた出来事はなかったです。

 

 

さいごに

なんだか何がいいたいのかわからなくなってしまいましたが、私の中でのこの強く繋がった記憶の話を誰かに伝えたくて(笑)

 

ちなみに、本(物語)としてはRossoの方が好きです。

順正は私としてはダメ男。まあ、あおいも相応にダメ女だと思いますが(笑)

 

最近、ラルクだのハイドだの、昔大好きだった音楽についてチラチラ書いていますが、今度実家に帰ったら昔集めていたものなど持ち帰って、懐かしいね大会をひとり開催したいと思っているので、うまくまとめられそうだったら書いてみたいと思います^^

 

 

*1:ここ数年のラルクおよびHYDE(VANPS)の曲は聴いていないので、あくまでも「当時」とさせていただきます。